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Jコミ MARKETING LABO

“生活者”と“鉄道”にフォーカスした
Jコミ独自の研究レポートをお届けします。

<研究テーマ> 移動する生活者を知る
(移動者研究・リアル行動編)
JR沿線居住者の通勤時の立ち寄りを捉える

前回のJコミマーケティングニュースではJR沿線居住者の通勤に着目し、最寄り駅周辺での立ち寄り行動についてレポートしてきました。今回は引き続き梅田周辺での立ち寄り行動を分析することで、通勤の全体像を把握することを目指します。この分析によって生活者の理解を深めるとともに、各エリアのまちづくり施策や取組の一助になれば幸いです。

ー研究レポートの一部、ご紹介ー
JコミMARKETING NEWS Vol.28(2023.3)<SUMMARY>

シリーズ 移動する生活者を知る(移動者研究・リアル行動編) JR沿線居住者の通勤時の立ち寄りを捉える ~芦屋駅・住吉駅・伊丹駅・宝塚駅利用者の最寄り駅周辺での立ち寄りレポート~
立ち寄り行動の全体傾向

《対象者全体の立ち寄り率》今回調査した4駅の利用者全体で、「行き」「帰り」のいずれかに梅田周辺に立ち寄る人の割合は1ヶ月平均16.7%でした。時間帯別の立ち寄り率は、「行き」が6.7%、「帰り」が13.5%といずれも最寄り駅周辺の半数以下に留まっており、通勤時には自宅から近い店舗や施設を優先して利用する人が多いことがうかがえます。
《利用駅別の立ち寄り率》梅田周辺での立ち寄り率は宝塚駅利用者が21.0%と最も高く、次いで住吉駅、伊丹駅が17.4%、芦屋駅が13.9%と続きます。これらは、最寄り駅周辺での立ち寄り率と比較してばらつきが小さいことから、梅田周辺での立ち寄りは居住エリアや利用駅の影響を受けにくい傾向があるといえます。
《曜日別の立ち寄り》カテゴリごとに梅田駅周辺での立ち寄り者数を曜日でランク付けしたところ、金曜·祝前日に立ち寄り者数が最大となる店舗や施設が最も多いことがわかりました。特に、「帰り」の時間帯では立ち寄り先の全65カテゴリで金曜·祝前日の立ち寄り者数が最多でした。また、立ち寄り者数が多かった上位10カテゴリに限れば、金曜·祝前日の立ち寄り者数は他曜日よりも「行き」で平均約1.2倍、「帰り」で平均約1.5倍増加しています。この差は、「行き」では仕事までの時間的制約が曜日によらずほぼ一定であるのに対し、「帰り」では立ち寄り意向が翌日の仕事の有無に大きく影響されるという違いが要因だと推察されます。

「行き」の時間帯の立ち寄り

《対象者全体で「行き」の立ち寄りが多い場所》対象者全体で「行き」の時間帯は【喫茶】への立ち寄りが最も多く、立ち寄りした人の14.9%、調査対象者全体の 1.4%が利用していることがわかりました。上位5カテゴリのうち3つが飲食店であり、特に【ラーメン 餃子】【うどん】といった時間のない朝でも気軽に立ち寄れるお店が好まれていることが読み取れます。同時に、【コンビニエンスストア】【専門食料店】への立ち寄りが見られることからも、「行き」の立ち寄りは朝食・昼食の喫食や購入に目的が集中していることがわかります。
《利用駅ごとの「行き」の立ち寄り》「行き」の梅田周辺での立ち寄り先上位5カテゴリは4駅で全て共通しており、利用駅ごとに大きな差異は見られませんでした。「行き」の最寄り駅周辺での立ち寄り先には【薬局·薬店】【クリーニング】【スーパー ディスカウントショップ】といった飲食店·食品店以外が含まれていたことを踏まえると、「行き」の梅田周辺での立ち寄りは居住エリアによらず画一的であることがわかります。さらに、各駅の相対的な特徴を把握するために、各駅の性年代別立ち寄り先上位5カテゴリについて、その立ち寄り率を全駅で高い順にランク付けしました。全体では上位5カテゴリが4駅で共通していたものの、性年代別では特に伊丹駅、宝塚駅利用者の立ち寄り先にばらつきがあることがわかりました。両駅には全体ではランクインしていなかった【薬局·薬店】に立ち寄る世代が存在しています。また、各駅とも、全性年代で【喫茶】の利用が多くなっています。住吉駅を除いた3駅の最寄り駅周辺での立ち寄り先には【喫茶】が上位にランクインしていないことを踏まえると、出勤前の一息や飲み物の購入には勤務地近くを利用したいという生活者全体の共通意識があるといえるでしょう。

「帰り」の時間帯の立ち寄り

《対象者全体で「帰り」の立ち寄りが多い場所》対象者全体で「帰り」の時間帯は【その他レストラン】への立ち寄りが最も多く、立ち寄りした人の6.4%、調査対象者全体の4.7%が利用していることがわかりました。上位5カテゴリのうち4つが飲食店であり、「行き」には見られなかった【和食飲食店】【居酒屋 ビアホール】といった立ち寄り先が見られることからも、時間に余裕のある「帰り」では個人の好みやスタイルに合わせた食事を選ぶ自由度や多様性が存在することが読み取れます。一方で、「帰り」の最寄り駅での立ち寄り先には飲食店の他にも【病院 医院 クリニック】【マッサージ 鍼灸·各種療法】【薬局 薬店】などが上位に含まれています。最寄り駅周辺では「生活に根差した場所や買物」、梅田周辺では「荷物になる買物よりもその場で楽しむ外食」がそれぞれ主な立ち寄り目的となっており、生活者は目的に応じて立ち寄るエリアを使い分けていることがうかがえます。
《利用駅ごとの「帰り」の立ち寄り》「行き」の時間帯と同様、「帰り」の梅田周辺での立ち寄り先も利用駅ごとに大きな差異はほとんどありませんでした。最寄り駅周辺での立ち寄りとは異なり、どの駅の利用者も梅田周辺での立ち寄りは「外食」が主目的であることは変わらないようです。これは、最寄り駅周辺では買物や病院といった「個人の生活」が立ち寄りの基軸である反面、梅田周辺では会社の同僚や友人との「交際」を目的とした立ち寄りが多いことが一因だと考えられます。「帰り」の梅田周辺での立ち寄り先は、性年代別でもほとんど違いがありません。「帰り」に梅田周辺へ立ち寄る主な目的が「外食」であることは、利用駅、性年代問わず生活者全体の共通認識だといえるでしょう。各駅とも、女性よりも男性の立ち寄り率が高くなっています。最寄り駅周辺での立ち寄り行動には男女差がなかったことを踏まえると、男性は梅田、最寄り駅によらず一貫して帰宅時の行動が活発であるのに対し、女性は男性よりも梅田周辺での立ち寄りが控えめだといえます。ただ、女性の中でも消費意欲が高い20代と、子育てが落ち着きはじめる50代の立ち寄り率は高くなっていることから、女性の立ち寄り行動はライフステージに大きく左右されているといえるのではないでしょうか。また、4駅の中でも宝塚駅利用者の梅田周辺での立ち寄りが少ないことがわかります。宝塚駅利用者は最寄り駅周辺での立ち寄りも少ないことから、通勤時の立ち寄り行動が控えめであるといえるでしょう。これは、宝塚駅が4駅の中でも比較的梅田からの距離が遠く、終電や終バスといった時間的制約が他駅よりも強いことが一つの要因でないかと推察されます。

前回と今回の2回にわたる調査では「行き/帰り」「居住エリア/勤務エリア」という観点から立ち寄り行動を捉え、 JR沿線居住者の通勤の全体像を把握することができました。今回得られた知見をもとに、さらなる調査や今後のまちづくりに活かすことができればと考えます。

調査概要
調査目的 JR沿線に居住する通勤者の「行き」「帰り」の最寄り駅周辺での立ち寄り状況の把握に基づく、生活者にとっての最寄り駅周辺の店舗・サービスに関するニーズの洞察
調査期間 2022年1月1日~5月31日の平日
調査方法 GPSによる位置情報取得
調査対象駅 JR芦屋・住吉・伊丹・宝塚の4駅
調査対象者 各駅から半径2㎞以内に居住し、JRを利用して通勤を行い、JR大阪駅から半径5㎞以内のエリアで勤務する生活者
立ち寄りの定義 「行き」は5:00~10:00、「帰り」は17:00~25:00の時間帯における、最寄り駅周辺での5分以上かつ5時間半以内の滞在、立ち寄り先店舗・施設を10のカテゴリに分類して集計

※5分以内の立ち寄りを含まないため、コンビニエンスストアなどでの短時間の立ち寄りは今回レポートの対象外