株式会社JR西日本コミュニケーションズ

ホーム 実績紹介 マーケティングラボ一覧 MARKETING LABO <研究テーマ>京阪神鉄道沿線研究

Jコミ MARKETING LABO

“生活者”と“鉄道”にフォーカスした
Jコミ独自の研究レポートをお届けします。

<研究テーマ> 京阪神鉄道沿線研究 「鉄道沿線の魅力を探る」:鉄道沿線の特性とイメージに関する研究

都市生活者の多くは鉄道沿線に生活拠点を持ち、鉄道を利用して拠点間を移動しながら様々な消費活動や余暇活動をしています。また休日には普段と違った路線を利用して買物に出かけたり観光スポットを訪れたりします。こうした生活者の行動の中における鉄道沿線の価値は、居住地として、消費場所として、非日常的な時間を楽しむ場としてなど、その目的によって異なり、従って各鉄道沿線は各々の特性に応じて生活者のどういった目的やニーズに対応した価値を創り出すかという方向性を定めることが必要となります。本研究は京阪神の主な鉄道沿線の特性を生活者の視点から捉え、各々が目指すべき価値創造の方向性を示唆するとともに、各々の価値に合致した生活者の意向を生み出すために形成すべきイメージ要素を探り出し具体的方策に結びつけることを狙いとしています。
まずは京阪神の30の鉄道沿線を対象とした「京阪神鉄道沿線イメージ調査」を実施し、生活者から見た各沿線の特性を捉えた上で、鉄道沿線の魅力を高めると思われるイメージ因子を抽出しました。

ー研究レポートの一部、ご紹介ー
JコミMARKETING NEWS Vol.23(2020.9)<SUMMARY>

シリーズ 鉄道沿線の魅力を探る 鉄道沿線の魅力を高めるイメージ因子 ~鉄道沿線に対する生活者の意識・意向とイメージとの関係性~

前回は生活者の視点で捉えた京阪神の主要鉄道沿線の特性をご紹介しましたが、今回は生活者が鉄道沿線に対して持つ意向や意識とイメージとの関係性を探ってみました。生活者の“出かけたい”、“住みたい”といった意向はどのようなイメージと結び付いているのか、“魅力を感じる”、“好意を感じる”、“信頼性がある”といった意識にはどういったイメージが寄与しているのかといったことを捉えることで、各々の鉄道沿線が目指したい価値創造に向けてどういったイメージを形成すべきかを明らかにすることが本研究の目的です。

お出かけ意向を高めるイメージ因子
図

鉄道沿線に対するお出かけ意向を、“一人で”、“友達や仲間と”、“恋人と”、“夫婦で”、“家族で”といったスタイル別に分類し、各々の意向に結び付くイメージ因子を抽出しました。
まず“一人で出かけたい”という意向には「街歩きを楽しめそう」、「アミューズメント施設で遊べそう」といった娯楽・レジャーのイメージ因子が寄与しています。また「駅からのアクセスが良さそう」、「庶民的な」といった因子も寄与し一人でのお出かけには気軽に楽しめる街の機能が求められているようです。

次に“友達や仲間と出かけたい”という意向には、「飲食店がたくさんありそう」、「ショッピングできる場所がたくさんありそう」といったイメージの寄与度が高く、飲食とショッピングが友達や仲間とのコミュニケーションのシチュエーションになっているようです。そして“家族で出かけたい”という意向に対しては「イベントが多そう」、「自然に触れられそう」といったイメージの寄与度が高く、子供が楽しめるコンテンツを含む娯楽因子の影響が強いようです。また「愛着を持った人が多そう」、「親しみのある」といったイメージもこの意向につながり、“家族で”の場合には“安心感”や“安定感”が求められていることが窺われます。また“恋人と出かけたい”の意向には「住むことにステータスを感じる」、「心地よい」といった上質な街の雰囲気が重視されるのに対し、“夫婦で出かけたい”の場合には安心で明るい街のイメージが重視されるようです。娯楽や観光に関して、“夫婦で”の意向に対しては「娯楽やレジャー」、「街歩き」、「繁華街」といった大まかな街のイメージが寄与するのに対し、“恋人と”の意向に対しては「アミューズメント施設」、「アウトドア」、「飲酒」、「ショッピング」など、具体的なお出かけ目的に直結するイメージが寄与しています。

居住意向を高めるイメージ因子
図

次に居住意向とイメージとの関係を、“一人で”ど‘家族で”に分けて捉えてみました。“一人で住みたい”という意向に対しては、「街歩きを楽しめそう」、「アミューズメント施設で遊べそう」、「アウトドアを楽しめそう」、「飲みに行きやすそう」などの娯楽因子が寄与していますが、いずれも一人で楽しめる場所やコトが想定されているようです。また「教育環境が良さそう」は学生街のイメージに結びついていると思われ、更に女性の単身居住者が増え「清潔感のある」のイメージも単身居住意向につながる重要な要素になっているようです。

一方 “家族で住みたい”という意向には「住むことにステータスを感じる」と「娯楽やレジャーを楽しめそう」のイメージ要素が強く寄与し、次いで家庭生活の基本条件となる「日常の買物がしやすそう」と「教育環境が良さそう」のイメージが寄与しています。また、「教育環境が良さそう」と「国際的な」のイメージは「住むことにステータス」を下支えする要素にもなっていると思われます。

好意的意識につながるイメージ因子

生活者が鉄道沿線に対してもつ“魅力を感じる”、“好意を感じる”、“信頼性がある”といった好意的な意識には、どういったイメージが寄与しているのかを探ってみました。
“魅力を感じる”という意識に対しては「心地よい」というイメージが大きく寄与し、更に「楽しい」、「活気のある」、「親しみのある」などのパーソナリティイメージが寄与しています。またバリューイメージでは「教育環境が良さそう」、「街歩きが楽しめそう」、「歴史や文化を味わえそう」等が寄与し、落ち着きのある文化的な沿線のイメージが“魅力がある”という意識につながっています。そして“魅力を感じる”が更に“好意”の意識まで進むのに寄与するイメージ因子は「心地よい」、「楽しい」、「教育環境が良さそう」、「親しみのある」、「街歩きを楽しめそう」、「治安が良さそう」で、特に「親しみのある」と「楽しい」の“好意”に対する寄与度が、“魅力”に対するよりも高くなっています。また“信頼性がある”の意識に対しては「伝統的な」のイメージが最も大きく寄与し、また「治安が良さそう」、「生活サービスが充実してそう」といったバリューイメージも寄与していることから、歴史や伝統のあるイメージと基本的な生活機能が充実しているイメージが“信頼性”に結びついていることが窺われます。

分析手順

調査内容は「Vol.22」を参照
重回帰分析により、生活者の特定の鉄道沿線に対する“出かけたい”、“住みたい”などの意向、“魅力を感じる”、“好意を感じる”、“信頼性がある”などの意識に寄与するイメージ因子を抽出。

●目的変数:生活者の鉄道沿線に対する意向・意識

〈意向〉
一人で出かけたい / 友達や仲間と出かけたい / 恋人と出かけたい / 夫婦で出かけたい / 家族で出かけたい / 一人で住みたい / 家族で住みたい

〈意識〉
魅力を感じる / 好意を感じる(好き) / 信頼性がある

●説明変数:生活者の鉄道沿線に対するイメージ因子

・教育環境が良さそう、生活に必要なサービスが充実してそう、日常の買物がしやすそう、歴史や文化を味わえそう、娯楽やレジャーを楽しめそう等のバリューイメージ因子

・洗練された、高級感のある、素朴な、親しみのある、活気のある、楽しい、心地よい、落ち着いた、将来性のある、伝統的な、清潔感のある等のパーソナリティイメージ因子